転倒予防へ体操普及/早くからの「貯筋」推奨「動作の専門家」集団 秋田県理学療法士会
理学療法士を一言で表すと「動作の専門家」だという(日本理学療法士協会ホームページから)。けが、病気の人の基本的動作回復を手伝ったり、加齢による運動機能低下を防いだりするのが役割で、医療機関や介護福祉施設などで活躍している。
秋田県理学療法士会(菅原慶勇会長)の会員約700人も、医療・福祉機関での通常業務のほかに、現時点で生活に支障のない人たちにも転倒予防などの指導を行っている。同会会員で秋田大大学院医学系研究科の若狭正彦教授(理学療法学講座)は「健康寿命延伸に向け、私たち理学療法士が関われることは多い」と言う。
幅広い年齢層に対し、対象者の特徴に合わせた指導を実施。中でも高齢者に対しては転倒予防の運動を奨励する。転倒による骨折は寝たきりにつながって要介護の状態を招きかねず、健康寿命を縮めるリスクがあるためだ。
高齢者向けの運動の一つが「いいあんべぇ体操」。若狭教授が秋田市保健所の依頼で監修した体操で、柔軟性やバランスをとる力、筋力を高めることを目指している。体調に合わせて無理なくできるようにしているのが特徴だ。
この体操は、同保健所や地域住民団体が開く教室に理学療法士が出向いて広めたり、同保健所のサポーター養成講座を受けた人が地域で普及させたりしている。今年11月に同市で開かれた同保健所主催の教室では、若狭教授がストレッチや、筋力アップの運動を指導した。
若狭教授は参加者に「筋肉やバランスを維持する上で、全部でなくてもできることを続けてほしい。週1回でも効果はある」と説明。約10年この体操を続けているという女性は「刺激が強すぎないから続けられている。自宅でもやれることをやっている」と明るい声で語った。
「私たちが発信するのもさることながら、『あの教室で運動を教わると体が楽になるよ』と参加者の口コミで広がることが理想」と若狭教授。「働き盛り世代にもアプローチし、筋力に関しては早くから『貯筋』することが望ましいと知らせたい」とも話す。
県内の理学療法士はこのほか、鹿角市、男鹿市の「シルバーリハビリ体操」、横手市の「らくらく体操」などの〝ご当地体操〟の考案・指導にも参画。高校球児のスポーツ障害予防にも協力するなど、貢献の範囲は広い。秋田県理学療法士会にとって2022年は発足50周年の節目。理学療法士の役割をさらに周知し、身体機能に焦点を当てた生活の質の向上を図っていく。