運動教室で機能改善期待/受けやすい健診の場も「セルフケア」を推進する美郷町

2020年04月30日 掲載
大勢の町民が心地よい汗を流している「ぐっと楽運動教室」=2019年4月、美郷町住民活動センター

 美郷町は独自の「セルフケア推進方針」をつくり、町民の健康意識を高めるための取り組みを続けている。町民の健康寿命を延ばして将来の医療費削減につなげる狙いだ。

ぐっと楽運動教室に集まり、車座になって談笑する参加者たち=19年2月

 中でも目を引くのが、体調改善や体力向上を図る「ぐっと楽(らっく)運動教室」。2019年度(19年4月~20年2月。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い3月から休止)は115回開かれ、延べ7646人が参加した。

 この教室は15年に始まり、高齢者を中心に口コミで参加者が増加。腰や膝の痛みを軽減する体調改善コース、体調改善に軽い動きを加えたコース、無理なく筋力アップを図れる運動を加えた体力向上コースの三つがある。大半が椅子に座ってできるメニューだ。

町が設けたコースでの健康増進ウォーキングに笑顔で臨む参加者たち=18年10月、美郷町の「薬樹の里」

 19年の体調改善コースでは参加者57人を対象に、椅子に座ったまま一定の幅で両足を左右に20往復させるのにかかる時間を測った。57人のうち56人が最初の測定から約4カ月後にはタイムを縮めたといい、町福祉保健課は運動を継続することで年齢を問わず身体機能の改善が期待できるとしている。

 17年には町内に三つのウォーキングコースを設け、毎月、「健康増進ウォーキング教室」を開催。歩数やカロリー消費量などを計測できる活動量計を250個用意して一定期間貸し出しており、利用者に月ごとや累計のデータを印刷して渡している。貸出期間終了後に活動量計を購入した町民が約200人いるといい、運動習慣定着と一日の活動量のアップに効果を上げている。

 ぐっと楽、ウォーキングなどの教室参加者には町の「健康ポイント」が付与され、50点または100点に達すれば、町と包括連携協定を結ぶ企業から提供された特典(賞品)が贈られる。教室に参加していない人に声を掛けて連れて来ることでもポイントが与えられる。

 町福祉保健課健康対策班長の煙山禮子さんは「参加者は教室に来ると、保健師にいろいろな話を聞かせてくれる。他の参加者と触れ合う場になり、高齢者の引きこもり予防にもつながる」と話す。保健師の澁谷敬子さんも「参加者アンケートで『心が明るくなった』『友達が増えた』と答える人が多い」と語る。

 運動の機会だけでなく、働き盛り世代が受けやすい特定健診、がん検診の場も提供。午前5時半から受け付けて出勤前に終えられるようにしている。17年の町の特定健診実施率は59.2%(県平均37.1%)と高い。町は健診・検診の受診をさらに促し、23年には62.5%まで引き上げたい考えだ。自分の健康は自分で管理するというセルフケアがどれだけ浸透するか注目される。