介護予防へ「フレイル健診」活用/高齢者の生活改善を後押し 市町村向けシステムを開発したアルファシステム

2020年10月31日 掲載
フレイル健診でバランス測定に臨む参加者=10月14日、男鹿市の脇本公民館

 高齢者の介護予防対策として国は本年度、後期高齢者の健診と介護予防を一体的に実施する事業を始めた。市町村が行う健診や地域の高齢者が集う場などで、介護予防が必要かどうかを判断する問診を行い、生活改善につなげていく。秋田市の医療システム開発会社「アルファシステム」(佐藤嘉晃社長)は、これに対応した健診システムを開発し、普及に力を注いでいる。秋田県が掲げる「健康寿命日本一」に、介護予防を通じて貢献したいという。

参加者は測定画面を見ながら検査を受ける

 国による介護予防の問診は75歳以上が対象。健診の受診者に食習慣や生活習慣、認知機能などに関する15の設問に答えてもらい、心身の状態を把握する。2024年までに全ての市町村が実施することになっている。

 アルファシステムが市町村向けに開発したのは、問診と身体機能測定などを組み合わせた「フレイル健診システム」。フレイルとは「虚弱」という意味で、要介護になる一歩手前の状態を示す。適切に対処すれば健康な状態に戻ることができるとされている。国の問診よりも詳細に健康状態を知ることで、日常生活を見直すきっかけにしてもらうことが狙いだ。

口腔機能の測定も行われた

 受診者は、国が設定した15問を含む36問の質問に回答。身体測定、歩く速さやバランスを測定する「身体機能評価テスト」、口腔機能を評価する「オーラルフレイル測定」にも臨む。健診時間は約2時間。測定結果に応じた保健師や管理栄養士の指導も含まれている。

 フレイル健診は、18年に秋田大学と共同開発を始めた身体機能評価システムを発展させて、今春発売した。本年度は経済産業省の「ヘルスケアサービス社会実装事業」に採択され、県内で実証を重ねている。21年2月までに大館、男鹿、秋田、藤里、三種、五城目の3市3町で約200人がこのフレイル健診を受ける予定だ。

 10月14日に男鹿市の脇本公民館で行われた健診には地元住民13人が参加。会場には歩行速度やバランスなどの測定機が並んだ。参加者からは「身体機能測定は難しい動作がなかったので、楽しく受けられた」「運動の機会が足りないとの判定だったので、今後気を付けたい」といった声が聞かれた。

タブレット端末を使い、問診に答える参加者

 同社によると、高齢化率の高い県内では、国の問診よりも詳細に高齢者の健康状態を把握できるフレイル健診に対して、市町村の問い合わせが多い。同社は「フレイル健診を東北、全国にも普及させることで健康長寿に貢献したい」としている。