秋田からも参加者、皇居での勤労奉仕に汗

2019年02月25日 公開

 今年は新しい元号となる年です。前に元号が変わった時には、生後3ヶ月の娘を寝かせた頭の上部に「今日から平成」と新聞一面の大見出し。娘の学年は、昭和63年生まれと昭和64年生まれに平成元年生まれが同級生にいる年でもあります。今上天皇が退位なされる前に何か行わせていただきたいと思い、立春2月4日から7日まで、皇居へ勤労奉仕に伺いました。

皇居

 勤労奉仕団は、朝9時〜午後4時まで皇居内の清掃活動を行います。4日間の勤労奉仕に8つのグループ総勢160名が参加しての活動です。秋田県や福島県、大阪府など、全国からさまざまなグループが参加しています。各グループに一人ずつ宮内庁担当職員が指導係としてつき、彼の指示に従って、私たちは一人ひとりが竹箒(たけぼうき)を持って道にある落ち葉を掃き、芝生のなかに生えている雑草を引き、熊手で芝生を整え、植木職人によって剪定(せんてい)されて落ちた小枝を拾い集め、正殿前の石畳では2mmの小石も見逃さず拾って歩きます。

正殿

 一日中清掃活動ばかり行うわけではありません。朝7時半に集合し、担当職員から当日の活動内容や注意事項を聞いた後に、ロッカーへ私物を預けて皇居内を巡るわけですが、さらに皇居内を案内してくださり、吹上御所の宮殿はじめ、皇居東御苑内の旧江戸城から庭園に至るまで子細に説明してくださいます。

 勤労奉仕団の活動では、健脚であることが求められます。私たちのグループは東京在住の参加者がほとんどでしたが、秋田県や大阪府からご参加のご高齢の方々もありました(勤労奉仕団への参加資格は15歳〜75歳まで)。60代、70代の男性も女性も、広い皇居内をきびきびと歩いていらっしゃいます。旧江戸城には急な坂道もありますし、庭園の中は階段も多くありますが、誰一人として転倒することもなく足取り軽く歩いていらっしゃいました。

 70代の女性に尋ねてみると、「皇居へ伺うのはこれが最後と、1年前から筋肉を作ることに努めたんですよ。何歳からでも筋肉や体力作りはできるものですね」と笑顔で教えてくださいます。「なにか行いたいことがあるとき、体力がないからと諦めてはいけません。あなたはまだ若いのだから、今からきちんと身体作りをして綺麗な食事をなされば、身体はちゃんと応えてくれます。筋肉は努力を裏切りませんし、綺麗に飲食していれば顔のシワやシミも少なくなりますからね」。おっしゃる通り、彼女の肌は美しい。

 皆さん様々な思いを抱えての参加ですが、天皇皇后両陛下から「ご会釈」を賜ることができた時は皆が感動した時間でした。全国から集まった勤労奉仕団の前に、天皇皇后両陛下がお出ましになられます。

天皇皇后両陛下ご会釈

 リーダーが各グループの説明を短く行うと、天皇陛下がお声掛けくださいます。「ふだんの仕事は大変でしょうね」「ご活躍くださいね」「福島の農作物はいかがですか、頑張ってくださいね」と、温かなお言葉をかけてくださる。皇后陛下がお声を発せられるときには、鈴を転がすような声とはこのことかと震えるほどに美しい発声と発音で静かに綺麗にお話なさる。そして天皇陛下がグループ皆を眺めてくださり「お元気で」とお声掛けくださります。

 ご会釈の時間を終え、両陛下がお帰りになられてから周りを見ると、多くの人が静かにハンカチで涙を押さえています。誰も声を上げて泣いているのではありません。感動ではなく、身体の中からわきあがってきた感謝の心が涙となって目頭を熱くしています。

「お元気で」。様々な思いが込められ、余分のないひと言の重みをかみしめました。

(画像はすべて宮内庁ウェブサイトからの転載です)

池内ひろ美(いけうち・ひろみ)
家族問題評論家、八洲(やしま)学園大学教授
岡山市生まれ。恋愛や結婚・離婚、親子関係などのコンサルティングから、作家、女優、大学教授など幅広い分野で活躍。コンサルティングでは、これまで3万7千件以上の相談に応じている。さらに、メディア出演や執筆活動、Girl Power代表理事などの職務を通して、世の中への情報発信や啓蒙活動も行っている。