平成最後のお花見をどこで楽しみますか

2019年03月25日 公開

 

 各地で桜の開花予想が聞かれていますが、今年は19日、福岡の舞鶴公園が開花を発表しました。東京では靖国神社にある標準木も開花が発表されましたね。秋田の気象台ではいつ開花するのか、楽しみですね。
 俳句の季語にも花見、花の宴、花巡り、花見客、花見舟、花見酒、花の茶屋、花の酔、とありますし、関連する季語には花、桜、桜狩、夜桜、花筵などがあります。
 桜の花をめで眺めるだけでなく、花の下で宴を開く日本人の花見好きは今さら語るまでもありません。アメリカやヨーロッパ、アジア諸国にも桜の名所はありますが、桜祭りが開かれ、ピクニック的な楽しみ方はされても、お弁当やお酒を持ち宴会のように昼も夜も楽しむお花見はやはり日本独自のものです。
 秋田には角館、千秋公園をはじめとした桜の名所がたくさんあることと思いますが、今年はどこでお花見をなさいますか? 毎年同じ風景の中で桜をめでる方もあれば、年によって新しい花を求めていらっしゃる方もあるでしょう。家族や仲間と桜の下に集うのか、お一人で静かに過ごされるのか、いずれにしても楽しみな時間です。もう何年もお花見をしていないという方は、平成最後でもありますので、ぜひお花見の時期を楽しく穏やかにすごしてください。

 穏やかな気持ちになることができるのはお花見だけではありません。
 四季の豊かな日本では、月の満ち欠けや草花のたたずまい、虫の音や鳥の声からも時の移ろいを読み取り、繊細な日本人の心を映してきました。

 近年は、季節の目安である二十四節気が見直されており、七十二候が話題に上ることもあります。若い人たちの中にも関心を高く持つ方々があるため、私が教鞭を執る大学の講義のなかで年に一度だけ和暦に触れています。
 二十歳前後の学生たちは、その言葉の美しさと、込められた意味の深さを思い、ためいきをつくことさえあります。今の時代は情報社会と呼ばれますが、同時に工業社会、農耕社会も存在している稀有な時だからこそ、若い学生がまだ経験したことのない農耕へ思いをはせることの大切さを感じてくれます。

 4月の今は、二十四節気でいえば「清明」から「穀雨」へ移ろう時期です。

 「春分」を過ぎた「清明」とは、万物が清らかでいきいきとしたようすを表す「清浄名潔(せいじょうめいけつ)」の言葉を訳した晩春をあらわす季語です。「穀雨」は、穀物の成長に大切な雨がたっぷり降り注ぐことを表し、種まきの時期でもあると教えてくれます。

 七十二候は、古代中国で考案された季節を表すものですが、二十四節気をさらに約5日ずつの3つに分けた七十二の期間のことを七十二候と呼びます。「玄鳥至(つばめきたる)」南から燕がやってきて農作業を始める清明の時期から、「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」日本で冬を過ごした雁がシベリアへ渡る時を経て、「虹始見(にじはじめてあらわる)」雨の後に美しい虹が現れます。桜の開花宣言が行われ始める今は、「葭始生(あしはじめてしょうず)」葦が芽を吹きはじめ、この後は霜が下りなくなり稲の苗が成長する「霜止出苗(しもやみてなえいずる)」となり、「牡丹華(ぼたんはなさく)」華の王とされる牡丹の花が咲くことで初夏を迎えていきます。

 私たちは今どこにいて、これからどこへ向かっていくのか。和暦を読むことはそれらを知ることにもつながります。時間を直線的にとらえるだけでなく、円環するようにまるく連なっていく時間軸があることは、命のつながりを大切にする、本質的な豊かさにもつながるのではないでしょうか。私たち年配者はそれを若い人たちに伝えていかなければなりません。
 一人一人の健康を考えるとき、命や文化を伝えていくことにもつながる心の健やかさ、想像することのできる豊かさを大切にしていきたいと思います。

池内ひろ美(いけうち・ひろみ)
家族問題評論家、八洲(やしま)学園大学教授
岡山市生まれ。恋愛や結婚・離婚、親子関係などのコンサルティングから、作家、女優、大学教授など幅広い分野で活躍。コンサルティングでは、これまで3万7千件以上の相談に応じている。さらに、メディア出演や執筆活動、Girl Power代表理事などの職務を通して、世の中への情報発信や啓蒙活動も行っている。