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取組・体験記・コラム

大自然を満喫しながらの座禅で気分リフレッシュ!

2018年09月14日
外国人も修行に訪れる「鳥海山国際禅堂」

 最近、気になっているのが顔のしわ。鏡を見ると、眉間に縦の線がくっきり刻まれていて気分がめいる。「ちょっとしたことでイライラしてるからかな」。そんなことを考えていたら、テレビで「ZEN」が世界的ブームだと放送していた。米アップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズ氏もはまっていたという。しわを薄くするためには、高い化粧品を買うより心の健康を保つとされる座禅に挑戦した方がいいかも!! 調べてみると「鳥海山国際禅堂」(由利本荘市矢島町)という禅道場の名前を発見。宿泊体験も可能だが、毎週水曜日夕方に開催されている「参禅会」の方が誰でも気軽に参加できそうな雰囲気。しかも、頼めば精進料理も食べられるそう。早速、予約の電話を入れ、秋田市から車を走らせた。

県内だけでなく、全国各地、さらには海外からも禅修行に訪れる人がいる「鳥海山国際禅堂」

 矢島町で山道に入り高台を目指していると、目の前に見えてきたのは見事なソバ畑。さらに進むと白い壁の禅堂が姿を現した。車を降りて振り返ると、眼下には矢島町の広大な自然が。さらに正面には霊峰・鳥海山がどっしりとそびえている。「何?ここ。すんごいビューポイントじゃん」。あまりの絶景に独り言を発していると、「いらっしゃい」と佐藤成孝(じょうこう)さん=65=が笑顔で出迎えてくれた。佐藤さんは、同町にある曹洞宗高建寺の住職で禅堂の堂長。堂長と聞いて少し怖そうなお坊さんをイメージしていたが、とても優しそうな人でほっとした。

 鳥海山国際禅堂は2006年、佐藤さんが托鉢(たくはつ)を5年行って募った浄財で建立。宗教や国籍を問わず門戸を開放しており、県内外から年間約200人が禅の修行に訪れている。名前に「国際」が付いているとあって、近年は海外から足を運ぶ人も。外国人にも対応するため、佐藤さんは英語で説法もできるというから驚きだ。

座禅の姿勢をチェックしてくれた堂長の佐藤さん(左)。この後、ありがたい警策をいただきました

 
当たり前のことが幸せ

 佐藤さんから禅についての簡単な説明を受けた後、いざ座禅堂へ。この日は私が座禅に初挑戦ということもあり、堂内で20分、堂外で20分の計40分というスケジュールを組んでもらった。まずは足を水で洗う「洗足」を行ってから堂内に入る。一呼吸しながら1歩1歩進むため、歩く速度はかなりゆっくり。「歩くことも含めすべての起居動作が修行であり坐禅の延長」という佐藤さんの言葉が頭をよぎる。畳に上がり、坐蒲(ざふ)と呼ばれる尻に敷く丸い座布団に姿勢を正しながら足を組んで座ると、「普段あまりやらないんだけど、警策(きょうさく)やりますか?」と佐藤さん。「あの、たたくやつですよね? お願いします!」。合掌しながら前傾した直後、バシッという音とともに右肩に衝撃が走った。「いっでぇー」と思わず叫ぶ。事前の説明で佐藤さんから「全然痛くないから」と聞いていたんだけど(泣)。

厳かな雰囲気の堂内で行う座禅。ピンとした空気が心地良い

 動揺していると、佐藤さんの3番弟子で僧侶の渡辺澄夫さん(68)が鐘を3回鳴らした。これが座禅スタートの合図。目を半分ほど開けて1メートルほど先に目線を落とし、自分の呼吸に意識を集めてみる。「・・・」。心を無にしようと思っても、仕事や食べ物のことなどが次々と頭に浮かび、なかなか落ち着かない。15分ほどすると、畳についている足のすねが痛くなってきた。痛さに気を取られているうちに鐘が1回鳴って座禅終了。次は禅堂の外へ出て芝生にござを敷き、周囲の風景を眺めながらの座禅だが、これが本当に素晴らしかった。静寂の中にかわいらしい鈴虫の声、心地良いそよ風、雲の流れる様は芸術作品のよう。自由に羽ばたく鳥の姿に、ミニチュアのような民家。残念ながら正面の鳥海山には雲がかかり全貌は拝めなかったが、まるで昔話の世界に入り込んだかのような不思議な気持ちに。「座禅を続けていると、自分という存在がちっぽけなものに思えて腹を立てたり悩んだりしてた事がばからしくなるんです」という佐藤さんの話に妙に納得した。

大自然を満喫しながら外で行う座禅に感動!好天に恵まれれば、鳥海山の雄大な姿を望むことができる

 今回は佐藤さんに精進料理も用意してもらった。玄米のおかゆに梅干しとたくあん、そしておかゆと一緒にいただくすりゴマとシンプルな内容。「これなら1分で食べ終わる」と思ったが、器の持ち方や食べ方など一つ一つの動作に細かな作法があり、結構な時間を費やした。禅の教えは、物も心も無駄を極限までそぎ落として「いま、ここ」を生きることを全身全霊で体得する事だという。この作法には洗い物を最小限にするなど、極力無駄を抑える意味もあり、禅修行者のつつましい生活ぶりと修行の神髄を垣間見る貴重な体験となった。

玄米のおかゆに漬物と、シンプルな精進料理。漆塗りの特別な器がすてきです

 座禅初挑戦を終え、何だかすっきりして、体の内側から爽やかな元気が湧いてくる気がした。実際に続けるとどんな効果があるのだろう? 昨年6月から近くの自宅から参禅会に通っている三浦徳久さん(63)は「悟りを開けるかと思ったけど、そんな劇的なことはない。ただ、息を吸って吐いて気持ちのいい時間を過ごすと、自分が生きていることを実感できるんです」と語る。佐藤さんも「実は『日々当たり前のことなど一つも無く、そのありがたさに感謝して爽やかに生きる』のが禅の修行。自宅で少しの時間座禅を行うだけでも、集中力が高まり、リラックス効果が得られますよ。美容にいいとも言われていますしね」と教えてくれた。やっぱり、何でも続けることが健康につながるんだな。しわに効くか分からないけど、自宅でもやってみよう!!

▼鳥海山国際禅堂(由利本荘市矢島町坂ノ下字上新田)
参禅会=日時/4月中旬~11月末の毎週水曜日17時~
芳志/心付け
宿泊参禅=日時/随時受け付け(要相談)
参禅費/1泊2食1人4000円(税込)
申し込み・問い合わせ/高建寺 0184・56・2193

僧侶の渡辺さん(左)に、器の持ち方から食べ方まで細かい作法を教わりながら精進料理をいただきました